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【遺留分Q&A-16】特別受益の持戻し免除と遺留分

遺留分の算定において、持戻し免除の意思表示のある特別受益はどのように扱われますか。

 

くり子ちゃん
1 民法903条3項では、被相続人が特別受益の持戻規定(民法903条1、2項)と異なる意思表示(持戻免除)をしたときは、遺留分規定に反しない範囲内でその効力を有する、と定められています。

民法1044条により、民法903条の規定は遺留分の基礎財産算入に準用される場合、どのように考えるべきかが問題となります。

2 この問題は、民法903条が遺留分に準用されたとき、同条3項をどう解すべきかにかかっています。

この点、大阪高判平成11年6月8日は、持戻免除は遺留分算定の基礎財産の算入には効力を有する余地はないと判断しました。

理由は以下のとおりです。

「民法903条3項は、持戻免除の意思表示が遺留分規定に反しない範囲内でその効力を有する旨を規定している。

しかし、これを準用し遺留分算定の基礎財産の算出を行う場合に、贈与の価額の持戻しをした場合の遺留分と、持戻免除を認め持戻しをしない場合の遺留分とを比較すれば、必ず前者が後者を上回り、遺留分の額を定める民法1028条に反することは明らかである。

また、そもそも、遺留分の規定は被相続人の処分の自由を制限するものであるし、遺留分算定のために持戻しを行うのに、これを行わない場合の遺留分に反しないかを問うのは、同義反覆的な矛盾である。

それ故、民法903条3項の遺留分規定の範囲内で、遺留分の基礎財産を算定するための持戻しを免除することはできないから、持戻免除の意思表示には同条3項によりその効力を有することはない。

したがって、被相続人が持戻免除の意思表示をした場合に、その意思に従い持戻を免除すべきことを民法903条3項が規定しているが、それは相続分に関する問題で、遺留分の基礎財産の算定には影響しないといえる。

また、このように解しないと、遺留分への準用でなく相続分を計算するうえでの本来の民法903条3項が無意味となる。

そうであるから、被相続人が民法903条1項所定の贈与について持戻免除の意思表示をしていても、被相続人の意思には関係なく、右贈与を遺留分算定の基礎財産に算入すべきことになる。

このように考えられるから、遺留分の基礎財産の算定の場合は、持戻免除の意思表示は無効としてこれを考慮することなく持戻しを行い、民法903条1項所定の贈与の価額を加算すべきである。

したがって、持戻免除の意思表示がある場合にも、それは同条3項に照らし無効で、民法903条の準用がその効力を失わないから、同法1030条のみの贈与の加算に限定される理由はない。

なお、民法903条所定の婚姻、養子縁組、生計の資本のための贈与でない共同相続人の受けた贈与の場合には、同法1030条による加算を行うべきであると考える。

控訴人は、これに対し、相続放棄、相続欠格事由の存在、相続人廃除の審判確定の場合との不均衡を指摘する。

しかし、これらの者は共同相続人ではないから、そもそも民法903条の準用による持戻し規定の適用がないので、遺留分算定の基礎財産の計算上は、民法1030条の贈与の加算規定によるほかない。

遺留分制度は、被相続人の恣意から相続人を守る制度であるから、被相続人のなす持戻免除の意思表示と、相続放棄、相続欠格事由の存在、相続人廃除の審判確定との間に差異が生じても、やむを得ないところがあるし、もともと、これらの場合に、持戻しを認めるか否かは立法政策の問題といえる。

以上のとおりであるから、被相続人が、共同相続人に対する贈与(特別受益)につき、持戻免除の意思表示をしている場合であっても、これを無視し、民法903条1項に定める贈与の価額は民法1030条に定める制限なしに遺留分算定の基礎財産に算入すべきである。」